ジャーナリングで明確にする「自分にとって本当に大切なこと」
自分自身の内側深くにある想いや考えに気づき、自分にとって何が本当に大切なのかを理解することは、充実した人生を送る上で非常に重要な要素です。しかし、日々の忙しさの中で自分と向き合う時間を持つことは容易ではなく、「自分は何を大切にしているのだろう」「どう生きたいのだろう」という問いに対して、明確な答えを持てない方もいらっしゃるかもしれません。
このような「自分にとって本当に大切なこと」、つまり自分自身の核となる「価値観」が曖昧なままだと、様々な選択や判断に迷いが生じやすくなります。情報過多の現代社会では、他者の価値観や世間の常識に流されてしまい、本来の自分自身の望みを見失ってしまう可能性も考えられます。
本記事では、ジャーナリングを通して自分自身の価値観を明確にする方法と、それがあなたの人生にもたらす効果についてご紹介します。ジャーナリングは、ただ日々の出来事を記録するだけではなく、内省を深め、自己理解を進めるための強力なツールです。自分と向き合う時間を持ち、心の声に耳を傾けることで、あなたにとって本当に大切なものが見えてくるでしょう。
価値観ジャーナリングとは
価値観ジャーナリングとは、自分自身の価値観を探求し、明確にすることを目的としたジャーナリングの実践方法です。価値観とは、あなたが人生において何を重要視し、何に重きを置くか、といった自分なりの判断基準や信念のことです。例えば、「誠実さ」「成長」「貢献」「安定」「自由」など、人によって様々な価値観があります。
この価値観を明確にすることは、自己理解(自分自身の思考パターンや感情、行動の傾向を深く理解すること)を深め、より自分らしい生き方を選択するための羅針盤を得ることにつながります。ジャーナリングを通して、この内面的な探求を行うのです。
価値観を見つけるためのジャーナリング実践法
自分自身の価値観を探求するためのジャーナリングには、いくつかの実践的な方法があります。ここでは代表的な方法をいくつかご紹介します。
1. 過去の経験から探る
あなたのこれまでの人生の中で、感情が強く動いた出来事を書き出してみましょう。それは喜び、感動、達成感を感じた時かもしれませんし、逆に怒り、悲しみ、失望を感じた時かもしれません。
- 問いかけ例:
- 「これまでの人生で、最も『生きがい』を感じた瞬間はいつですか?それはなぜですか?」
- 「どんな時に最も充実感や幸福感を覚えましたか?その状況を詳しく描写してください。」
- 「過去に腹が立った出来事や、許せなかった言動は何ですか?なぜそれがあなたを不快にさせたのでしょうか?」
- 「困難な状況を乗り越えた経験はありますか?その時、何があなたを支えにしましたか?」
これらの問いに対する答えを自由に書き出してみてください。それぞれの経験の背後には、あなたが大切にしている何かや、逆に大切にされていないと感じた何かがあるはずです。そこに隠されたあなたの価値観を見つけ出すヒントがあります。
2. 理想と願望から探る
「もし」という仮定を使って、あなたの理想や願望を探ることも価値観の発見につながります。
- 問いかけ例:
- 「もし、時間やお金、能力の制約が一切なかったら、何をしたいですか?どんな人生を送りたいですか?」
- 「どんな人の生き方や考え方に最も惹かれますか?その人のどんな点に共感するのでしょうか?」
- 「あなたが理想とする社会や世界はどのようなものですか?そのために自分にできることは何だと思いますか?」
- 「もし、あなたの人生で最も大切にしていることを3つ挙げるとしたら、何になりますか?それはなぜですか?」
これらの問いかけは、あなたが本当に求めているもの、心から大切にしたいと願っているものを浮き彫りにします。書き出した答えの中に、あなたの隠れた、あるいは顕在化していない価値観が見つかるでしょう。
3. 反応や感情から探る
日常の中で抱く感情や、物事に対する反応も、あなたの価値観を映し出しています。
- 問いかけ例:
- 「最近、ニュースや周囲の出来事を見て、心が動いた(感動、怒り、悲しみなど)のはどんなことですか?それはなぜですか?」
- 「どんな時に最もストレスや不満を感じますか?その状況の何があなたを不快にさせるのでしょうか?」
- 「どんなことに時間やエネルギーを費やすのが苦にならないどころか、むしろ楽しいと感じますか?」
- 「他人のどんな言動や行動に感心したり、尊敬の念を抱いたりしますか?」
これらの問いを通じて、あなたが何に価値を置き、何に価値を置いていないのかが明らかになってきます。ポジティブな感情もネガティブな感情も、あなたの価値観を理解するための貴重な手がかりとなるのです。
内省を深めるためのヒント
ジャーナリングで価値観を探求する過程で、内省をさらに深めるためのヒントをいくつかご紹介します。
- 「なぜ?」を繰り返す: 書き出した答えに対して、「それはなぜだろう?」と繰り返し問いかけてみてください。表層的な理由のさらに奥にある、根本的な価値観に近づくことができます。
- キーワードを抜き出す: ジャーナリングを通じて繰り返し現れる単語やフレーズ、テーマに注目しましょう。それらがあなたの核となる価値観を表している可能性があります。
- リスト化と優先順位付け: 書き出されたキーワードや概念をリスト化し、自分にとって特に重要だと感じるものに絞り込み、優先順位を付けてみることも有効です。
- 定期的な見直し: 価値観は人生経験と共に変化することもあります。一度見つけた価値観も、定期的にジャーナリングで見直すことで、その時々の自分にとって本当に大切なことを再確認できます。
価値観ジャーナリングによって得られる効果
自分自身の価値観を明確にすることは、人生の様々な側面において有益な効果をもたらします。
- 意思決定が容易になる: 自分の価値観が明確になると、人生の岐路に立った時や日々の小さな選択において、自分にとって何が最善かを判断する基準ができます。迷いが減り、より迅速かつ納得のいく意思決定が可能になります。
- 自己肯定感の向上: 自己肯定感とは、「ありのままの自分を肯定的に受け入れる感覚」です。自分の価値観を理解し、それに沿った生き方を選択することは、「自分は大切なものを理解し、それに向かって生きている」という感覚を育み、自己肯定感を高めることにつながります。他者の評価に過度に左右されにくくなります。
- 将来への不安の軽減: 漠然とした将来への不安は、「自分はどうなりたいのか」「何を目標にすれば良いのか」が不明確であることから生じることが少なくありません。価値観が明確になると、自分自身の内側から湧き上がる「こうありたい」という方向性が見えてきます。これにより、ブレない自分軸ができ、将来に対する漠然とした不安が和らぎ、希望を持って未来を考えることができるようになります。
- 集中力・モチベーションの維持: 自分の価値観に根ざした目標や活動は、内側からの強い動機付け(モチベーション)となります。なぜそれをするのかという理由が明確になるため、困難に直面しても諦めずに粘り強く取り組む力(集中力)が維持されやすくなります。
- 人間関係の質の向上: 自分の価値観を理解することは、他者との関係性においても役立ちます。自分が何を大切にしているかを理解することで、どのような人との関係性を深めたいか、どのようなコミュニケーションをとりたいかが見えてきます。また、他者の価値観を理解しようとする姿勢にもつながり、より健康的で充実した人間関係を築く助けとなります。
実践を継続するためのヒント
価値観ジャーナリングは、一度行えば終わりではありません。継続することで、より深い自己理解につながり、変化する自分自身に合わせて価値観を再確認する機会にもなります。
- 完璧を目指さない: 毎日書く必要はありませんし、完璧な文章を書こうとする必要もありません。思いついたこと、感じたことをありのままに書き出すことが大切です。短い時間(5分や10分)から始めてみましょう。
- ツールは自由に選ぶ: 紙のノート、スマートフォンのメモアプリ、PCのテキストエディタなど、自分が最も取り組みやすいツールを選びましょう。
- 記録を振り返る習慣を持つ: 一度書いた内容を定期的に(例えば週に一度、月に一度など)読み返してみましょう。新たな発見があったり、自分の変化に気づけたりします。
まとめ
自分にとって本当に大切なこと、つまり自分自身の価値観を明確にすることは、自己理解を深め、自己肯定感を育み、将来への不安を軽減し、集中力やモチベーションを高めるなど、人生の質を高めるための強力な一歩となります。
ジャーナリングは、この価値観を探求するための有効で実践的な手段です。過去の経験、理想や願望、日常の感情といった様々な角度から自分自身に問いかけ、その答えを書き出すことで、あなたの内側にある大切なものが浮き彫りになってきます。
ぜひ、今日から少しでも時間を見つけて、自分自身の価値観と向き合うジャーナリングを始めてみてください。ペンを持つ、あるいはキーボードに向かうその時間が、あなたの人生にとっての新たな羅針盤を見つける貴重な時間となるはずです。