ジャーナリングに「書けない」と向き合う:実践を続けるためのヒント
ジャーナリングを始めたものの、しばらくすると「何を書けば良いかわからない」「書く気が起きない」といった壁にぶつかることは珍しくありません。これは、ジャーナリングを内省や自己成長のツールとして捉え、継続しようとする際に多くの人が経験することです。書けない状況が続くと、自己嫌悪に陥ったり、ジャーナリング自体をやめてしまったりすることもあるかもしれません。
しかし、「書けない」という状況もまた、自分自身と向き合う貴重な機会となり得ます。この時期を乗り越えるための具体的な方法や考え方を知ることは、ジャーナリングをより深く、そして長く続ける助けとなるでしょう。
なぜ「書けない」と感じるのか:原因を探る内省
ジャーナリングが滞る背景には、様々な理由が考えられます。これらの原因を探ることは、自己理解の一歩となります。
- 完璧主義に囚われている: 「何か素晴らしいことを書かなければ」「きれいにまとめなければ」といった考えが、書くことへのハードルを上げてしまうことがあります。
- テーマが見つからない: 日常が単調に感じられたり、特別な出来事がなかったりすると、何について書くべきか迷ってしまうことがあります。
- 心身の疲労: ストレスや疲労が蓄積していると、内省のためのエネルギーが不足し、書く気力が湧かないことがあります。
- 時間や場所の制約: 忙しすぎたり、落ち着いて書ける場所がなかったりすることも、物理的な障壁となります。
- 義務感に変わってしまった: 習慣化しようとするあまり、「書かなければならない」という義務感になり、楽しさや意欲が失われてしまうことがあります。
- 書く内容への恐れ: 自分の内にあるネガティブな感情や向き合いたくない現実に触れることへの無意識の抵抗がある場合もあります。
これらの原因を自分自身に問いかけてみるだけでも、なぜ書けないのか、その根源にある感情や思考パターンに気づくことができます。
「書けない」時でも実践できるジャーナリングのヒント
「書けない」と感じる状況を乗り越え、再びジャーナリングを始めるための具体的な方法をいくつかご紹介します。これらの方法は、内省の機会を失わずに、実践へのハードルを下げることを目的としています。
1. 「完璧に書く」を手放す
まず、「ジャーナリングは完璧である必要はない」という考え方を受け入れましょう。書く内容、形式、量に決まりはありません。 * 数行でも良い: 今日感じたこと、頭に浮かんだこと、たった一言でも構いません。短い言葉でも、書き出すこと自体に意味があります。 * 箇条書きや単語リスト: 文章としてまとまらなくても、キーワードや箇条書きで思考や感情をリストアップするだけでも、内省の助けになります。「今日の気分:だるい、不安、でも少し楽しみ」「やることリスト(頭の中):課題、バイト、予約」のように、思考の断片を書き出してみましょう。 * 形式にこだわらない: きれいなノートに書く必要はありません。裏紙やスマートフォンのメモ機能でも十分です。
2. 「書けない」こと自体をテーマにする
なぜ書けないのか、その感情や状況をジャーナリングのテーマにしてみましょう。 * 「今、私は書くことができないと感じている。なぜだろう?」「ペンが進まないのは、何かに抵抗を感じているからかもしれない。それは何だろう?」「ジャーナリングに対して、どのような期待やプレッシャーを感じているのだろう?」 * このようなメタ内省は、書けない原因を探り、ジャーナリングとの向き合い方を見直すきっかけとなります。
3. 形式やツールを変えてみる
いつもと違う方法を試すことで、気分転換になり、書くことへの抵抗感が和らぐことがあります。 * デジタルツール: 手書きにこだわらず、PCやスマートフォンのメモアプリ、ジャーナリング専用アプリを使ってみる。タイピングの方が思考がスムーズに進むこともあります。音声入力で思ったことを喋ってみるのも良いでしょう。 * フォーマットを変える: フリーライティングだけでなく、あらかじめ項目が決まっている「プロンプトジャーナル」や、特定のテーマ(感謝、今日良かったことなど)に絞ったジャーナルを試してみる。 * 絵や図を取り入れる: 言葉にならない感情や考えを、簡単な絵やマインドマップで表現してみる。
4. 内省を深める問いかけを活用する
テーマが見つからない時は、具体的な問いかけに答える形で書き進めるのが有効です。特に「書けない」と感じる時に役立つ問いかけです。
- 今、一番避けたいと思っていることは何だろう?
- もし書くことへのプレッシャーが一切ないとしたら、今何について書きたい?
- 今日、ほんの少しでも心を動かされた出来事はあった?(良いことでも悪いことでも)
- 今の気持ちを一言で表すなら?その気持ちになった理由は?
- ジャーナリングで得たいものは何だった?初心に戻ってみよう。
- 次にジャーナリングを開くとしたら、いつ、どんな状況で書きたい?
これらの問いかけは、停滞した思考に新しい視点をもたらし、内なる声に耳を傾ける手助けとなります。
「書けない」時期を乗り越えることがもたらす効果
ジャーナリングが滞る時期は、決して無駄な時間ではありません。「書けない」という状況と向き合い、上記のようなヒントを試す過程で、以下のような自己成長が期待できます。
- 自己理解の深化: なぜ書けないのか、何が自分を妨げているのかを探る過程で、自身の内面や思考の癖について新たな気づきが得られます。これは、自己肯定感の低さや将来への不安といった課題の根源にアプローチすることにも繋がります。
- 問題解決能力の向上: 「書けない」という問題に対して、様々なアプローチを試す経験は、現実世界の課題に対する柔軟な思考力や解決能力を養います。
- 自己受容: 「書けない自分もいる」という事実を受け入れることは、完璧ではない自分を許容する練習になります。これは自己肯定感を育む上で非常に重要です。
- ジャーナリングとの関係性の再構築: 義務感から解放され、自分にとってより良い形でジャーナリングを捉え直すことができます。これにより、継続へのモチベーションが自然と高まります。
継続のためのヒント
「書けない」時期を経てジャーナリングを再開した後も、継続を助けるための一般的なヒントがあります。
- 無理のない目標設定: 毎日書くことにこだわらず、週に数回、あるいは「書きたい時に書く」というスタンスでも構いません。
- 書く時間を固定する: 生活の中にジャーナリングの時間を組み込むことで、習慣化しやすくなります。朝起きてすぐ、寝る前など、自分にとって続けやすい時間を選びましょう。
- 場所を決める: 特定の場所で書くようにすると、スムーズにジャーナリングモードに入りやすくなります。
- 書くことを自分へのご褒美にする: ジャーナリングの時間を、自分自身のために取るリラックスや内省の時間と捉えましょう。
まとめ
ジャーナリングの実践において「書けない」という状況に直面することは、決して失敗ではありません。それは、自分自身の状態やジャーナリングとの向き合い方を見つめ直す貴重なサインです。
なぜ書けないのかを内省し、完璧を目指さない、形式を変える、問いかけを活用するといった具体的なヒントを試すことで、再び書くことへの意欲を取り戻すことができるでしょう。そして、「書けない」時期を乗り越え、ジャーナリングを継続していく経験そのものが、自己理解を深め、様々な課題に対処していくための力となります。
どうぞ、ご自身のペースで、ジャーナリングと長く良い関係を築いていってください。